INTERVIEWS

2022/01/27

DRIVE会議室のグラフィックアートを担当するコワーキング会員 三木 奈津美に聞く会議室デザインの裏側やDRIVE1年の変化

​SAPPORO Incubation Hub DRIVE には多様な働き方をしている方々が同居しております。今回は、DRIVEコワーキング会員であり会議室の壁面グラフィックアートを担当している三木 奈津美さんに話を伺いました!

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三木 奈津美

1985年生まれ、旭川市出身。Sapporo School of The Arts(旧・札幌市立高専インダストリアルデザイン科)で5年間、アート・デザイン・建築を学ぶ。2014年頃から個人事業でグラフィック・イラスト・壁画制作・執筆などを行う。2021年、厚真町企業研修型地域おこし協力隊として移住。株式会社たのしいで原木栽培椎茸「たのしいたけ」のブランディングや、一般社団法人ATSUMANOKI96に携わりながら、森や環境の事業開発を模索中。

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ーー普段は何をされているのですか?

基本的にグラフィックデザインとアート、執筆関係の仕事をしています。

主なのは、ブランディングや絵の仕事です。デザインは、コンセプトメイキングからコピーライティング、ロゴ、グラフィック、ウェブサイト、映像制作などをしています。絵は、イラストや壁画を。その他にも絵をお店で販売してもらっていて、今は、九州の大分県にあるお店や、札幌大通りの美容室などに置いています。あとは、マルシェなどの催事で似顔絵を描くのも好評なようで、たまに出店しています。

ーー様々な活動をされていると思うのですが、今一番力を入れていることは何でしょうか?

森と菌と数学の勉強と、生活習慣を改善したいです。笑

2021年8月に人口4400人程度の厚真(あつま)町へ地域おこし協力隊として移住しました。

札幌から車で1時間くらいの町です。

株式会社たのしいで、原木栽培の「たのしいたけ」を中心にブランディングのお仕事をしています。職場が農家で、朝、しいたけの収穫や原木運びから一緒にやるのですが、農作物の商品開発や販路開拓、レシピ提案が主な業務です。

厚真町では、林業や森に関わるプレーヤーが活動している「​​ATSUMA96% PROJECT」とそのプロジェクトから生まれた一般社団法人ATSUMANOKI96にも関わっています。

移住をきっかけに新しい関係がスタートしたので、ひとつひとつを大切にしていきたいです。

ーー地域おこし協力隊としてだけではなく、自分の事業も通してですか?

両方を考えていきたいです。様々な方の力を頼りにしながら、一緒にその都度面白いことや、解決策、次の展開を模索したいと思っています。

ーー株式会社たのしい以外の個人の活動も含めると毎日動き回ってるように見えるのですが…

そうですね。忙しかったんですが、お休みもちゃんといただいてます。笑

ーー高専を卒業されたとのことですが、その間はどのようなことを勉強されていたのですか?

5年間アートとデザインを勉強する学校だったので、いろいろやりました。

高校生の年齢にあたる最初の3年間は、芸術の授業が多かったです。デッサンやスケッチ、彫刻、写真、映像をやったり、現代アートの概論だとか幅広くアートを学びながら、高校の一般的な授業もありました。

短大生の年齢の2年間は、建築デザインコースを選び、住宅から公共施設まで設計の課題をたくさんやったのですが、そのときにコミュニティに興味を持ちました。

建築って、建物を設計する過程で、人の生活の動線や、地域、時間軸のことをすごく考えるんです。これって建物じゃなくて、その周りで起こることを設計しているんだろうなぁ、と考えてみると「人」のことをもっと知りたいと思いました。

学生会の運営を任されたり、狸小路でアートプロジェクトの課外活動をしたり、舞台づくりで地方公演をして地元の子ども達にワークショップをやったりと、人に関わる経験をするなかで、カタチをつくる「外のコト」に関心が湧いたんです。

学校では、「とにかく手を動かすこと」を教えてもらったけれど、もっと、事業とか地域社会とか、時間の流れのあるコトを知りたいし、どうやったらつくれるのかなって。

でも、ずっと、興味あるけどどうしていいか分からない、みたいな感じでした。

ーーどうしていいか分からない、というと?

なんとなくデザインの世界に飛び込みきれなくて、フリーターをやりながら、21歳の時に東京に行ったんです。

当時、「デザインは、40代からようやく若手」という教育を受けていたので、20代のうちに寄り道してもいいかなという気持ちもあったのですが。30代から頑張ればいいかなぁって。

東京でふらふらしていたら場づくりをやろうとしている友人に出会いました。そのときは、出会いの場をつくって、好きなことを語り合って、お互い応援しあおう、みたいなことをしていました。ワクワクを共感しあえるきっかけをつくろう、パッションを尊重しあおう、みたいな和気藹々とした雰囲気で。あとは、絵を描いたり、踊ったり、文章を書いたり、表現を分かち合う場みたいな意味合いもありました。

場づくりってなんだろう?って思いながら21〜23歳くらいのころまで関わっていたんですが、事業化はできずにそのまま離れてしまいました。まだスマートフォンが出てくるちょっと前くらいの頃で、コミュニティとか場づくりという文脈も、理解がある人は少なかったような印象がありましたし、コワーキングスペースなんかも東京でもまだ全然一般的ではない時期で。そういうのがアメリカにあるらしいよ、ノマドって面白そう、みたいな話をしていました。

それから、24歳の時に、札幌に帰ってきて、結婚して。外に出ることも減っていくのですが、でも場づくりの存在はずっと気になっていたんです。あれ、楽しかったなぁって、一人で考えていたりはしたんですけど、考えるだけで終わってました。

31歳で離婚をしたら自由になって、20代に我慢したことをやり直してみたいというタイミングのときに、たまたま札幌のゲストハウスwayaで場づくりのイベントがありました。

つくばでコワーキングを運営している人たちが、札幌のゲストハウスオーナーたちとわいわい話して、飲んで、楽しくて。懐かしいな、今こんな感じでやってる人たちがいるんだ、すごいなぁと。

ーーその中でDRIVEはどのようなきっかけで知ったんですか?

カフェ&コワーキングスペース大人座を月額会員(マフィア)で仕事場として利用していたとき、DRIVEをつくっているという話を聞いて、「DRIVEの壁画を描きたい」と五十嵐さんにお願いした気がします。「じゃあ、提案出して」と言われて、一生懸命コンセプトやなんやらを提案したら「描いていいよ」みたいな感じになりました。

大人座の壁画を描かせてくれたときは、「自由に好きに描いて」と言ってくれていたので、あ、DRIVEはちゃんと考えなきゃいけないのか、と緊張しました。笑

ーー会議室1と会議室2で完成してるってところはあるんですか?

いや、ない。ないです。

ーーあ、ないんですね。笑

そうなんです。笑

会議室1は「鹿」、会議室2は「北海道の未来の産業」がテーマです。

会議室2は、最初「DRIVEだから車の絵とかどう?」と言われて、車の歴史を調べました。すると、かっこいい車が出てきたんですよ。1899年にガソリン車よりも早く、世界で初めて100km/hを突破した電気自動車があったようなんです。昨今、ガソリン車からEV車へというムードがありますが、歴史を辿ると電気自動車はこんなに昔から存在していたのか、と驚きました。

乗り物の歴史もみていたら、飛行機のイメージの元になる最初のスケッチを描いたのは、レオナルド・ダヴィンチでした。レオナルド・ダヴィンチって、モナリザや最後の晩餐が有名ですが、発明家・解剖学者・科学者としても実績を残しているマルチプレイヤーで、面白いかもと思って、なんかこう、宇宙、ロケット、テクノロジー、自然科学、旅を古今東西ごちゃまぜにしながら描いていて。

今後もまたアップデートしていきます。笑

ーー会議室1は今後どのような変化があるのでしょうか?

北海道の大自然を描きたくて。よくモチーフとして鹿の絵を描くのですが、自然には、人間の理想だけじゃどうにもならないモヤモヤがずっとつきまとう。この違和感に、どこまで向き合えるのかな、と。

こちらは、焼きゴテで木に絵を描いています。まあ、電気は使うけどもゴミは出さずに済む。より素材を感じられるし、炭化の質感と濃淡で鉛筆のような繊細な線もかける。線画を描くのが好きなので、あれこれ試しながら制作を進めています。

ーー会議室1が自然で、会議室2が未来。なんですね!

そうですね。実は、渡り廊下に北海道の歴史絵巻も描きたいって話もしてたんですけど、全然そっちは着手できてなくて。ちょっと諦めはじめてます。笑

ーーDRIVEで過ごして1年が過ぎ、どのような変化が見られましたか?

壁画を完成させたいってのもあるんですけど、DRIVEが始まる前に思い描いていた、北海道や札幌がこうなったらいいなぁというイメージが、どんどん実感として感じられていて。宇宙産業が盛り上がったらいいよね、とか、学生起業家が増えたらいいなぁ、とか、スタートアップを応援する仕組みが増えたらいいよね、とか。得られる情報の質が変化したというのもあるのですが、DRIVE自体が、次々といろんな仕掛けを実現していて、さすがだな、すごいな、と思っています。

ーーDRIVE入ってて良かったことって何かありますか?

チームで働くことや起業への憧れができました。アートやデザインもそうですが、森とか環境の事業をなにかできないかなぁ、と。まだ先のことはわかりませんが、「もし事業をつくるなら」と想像していくなかで厚真町への移住を選択したという側面がありますが、引き続き札幌やDRIVEでも楽しいことをしていきたいですし、新しい情報が入ってきたり、いろんな方と事業の雑談をしたり、一緒に仕事をつくっていける環境は、非常に面白いなと思ってます!