SAPPORO Incubation Hub DRIVE では、多様な業種の方々が入居しています。今回は、元法務省職員、現在「公務員が職場で言えない話を聞く人」として活動する会員 安彦和美さんに現在の活動に至った背景と実際にDRIVEを使用して感じたことをDRIVE Community Staff 鈴木うららがお話を伺います。
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「公務員が職場で言えない話を聞く人」
安彦和美(あびこかずみ)
札幌市出身、1974年生まれ。会社員5年→公務員16年(その間合法な副業10年間)→2019年春に退官し、独立。開業から2年8ヶ月で、公務員に特化した相談400件、講座やイベント参加者1056名、Udemy受講生1060名。
公務員が「職場で話せないこと」を解決するサイトです。
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ーー安彦さんが現在されている活動内容について教えてください。
個人事業主3年目になります。国家資格キャリアコンサルタント、コーチング認定コーチ兼講師、というのが肩書きではありますが、やっていることは「公務員が職場で話せない話を聞く人」です。
具体的には、マンツーマンでのご相談を受けたり、グループで講座を行ったり、イベントを開催したり、動画教材を作って販売したりしています。
ーーイベントでは具体的に何をされているんですか。
イベントでは、公務員だけのオンライントークイベント、PubPub(ぱぶぱぶ)というのを毎月開催しています。パブリック(公共)のお仕事をしている人が、パブのようにくつろぐ、公務員しか来ないオンラインイベントです。2019年12月に立ち上げて、全国から現役公務員さん10人に幹事さんになってもらって、今まで累計400人近くの方が参加されております。最近では公務員の安全な投資について扱いました。上司との面談や、人事異動、辞めたい、などなど職場ではあまり話せない話を毎月テーマを変えてやっています。
ーー安彦さんの出された動画教材の内容はどういったものなのですか。
Udemyという動画教材販売プラットホームにて、動画教材を配信しています。『公務員が在職中からできる起業準備』や、『公務員が懲戒処分にならずに副業をする方法』、『公務員が副業した時に確定申告する方法』、あとは『実名とか顔写真なしでFacebookを使う方法』とか。直近では『自分に自信がない公務員が再認識すべき7つの強み』を出しましたね。
ーー私(DRIVEスタッフ:鈴木うらら)は公務員である学校教員も将来の選択肢にあったりするのでとても気になります!
そう、だからうららさんが私のインタビューの担当だというのもなかなか味わい深いよなーと思ってたんです。私の生徒様にも教員の方、非常に多くいらっしゃいますよ。教員の職場の現場はブラックで、そこに行くと様々な活動もできなくなるという制約があるとよく耳にします。
ーーそうですね、ずっと学校の先生を目指していて、でも教員になってしまうと他のことがやりづらくなってしまうのかなと…やりたいことも沢山あるので悩んでいます。
でしょう、そう思うと思いますよ。なのでなった人はみんなその八方塞がりになるんです。在職中に活動したいという人がいても、規則や制限がたくさんあり、活動できないという壁があります。加えて、教員に限界を感じて、辞めたいと思っても、次の進路が見出しづらいんです。たとえば、教員の多くは、起業経験や転職活動をしたことがなく、外に出たらやっていけないって思っている方が多くいます。大学の同級生もみんな教員だったりするから、教員ではない世界にいる人とあんまり関わらないんですよね。ということは心理的ハードルもあり、社会的ブロックもあり、なおかつ雇用保険は適用されないのでハローワークに行っても求職活動ができない。公務員というキャリアは、定年退職以外の出口がない、袋小路なんです。だからそもそも、非合法なこととか抜け道とかいう話ではなく、社会的にそうつくられていると常に感じます。
ーー安彦さんの生徒さんに教員も沢山いらっしゃるということは、実際教員でも副業されていたり何か他のことされてる方とかいらっしゃるんですか?
そうですね。例えば現役の教員さんで自分の名前とか顔出しして紙の本を出版されてる方もいらっしゃいます。職場にOKをもらってお墨付きで活動するという方法もあるし、仕事に関係のないプライベートな活動であれば、職場の許可なくできることもあります。なので、全てがすべてダメでもないのです。
この間は、YouTubeで音楽配信したいと先生からお問い合わせがあって、「どうやったらできますか」と。それは今模索中ですが一緒に考えています。懲戒処分になったりとかしないようにやっていくんだったらどうしようかとか、そういうのって学校の中じゃ相談できないじゃないですか。校長先生に聞いたって、理解のある先生とそうでない先生がいるから。ことなかれ主義で、「今はそういうことはやめておいてください」って言われたりとか。だから一緒にその就業規則を確認して、何が許されて、何が許されなくて、どこだったら活路があるのか、どう進んでいくのかを、ご本人のキャリアの10年後20年後とか見据えながら話しています。
例えばYouTubeでメンバーシップやりたいといっても、その先、先生としてずっとやりながら音楽活動をライフワークとしてやりたい方なのか、これから教員を辞めて音楽で生活をしていきたいということなのか、着地点が違うのでご本人の家庭環境とか希望とか伺いながらそこでどう折り合わせていくか、みたいな話をしています。というのが、さっきの個別相談・講座・イベントみたいなとこになってきますね。
ーーそもそも、安彦さんが公務員の副業・兼業というものに目をつけたのはなぜですか?
私が悩んでたからですね。
ーー元々会社員から公務員になられて、今個人事業でやってらっしゃるっていう経緯がありますもんね。会社員から公務員に転職された背景を教えていただけますか
会社員時代は、人事に配属されました。採用とか教育とか研修とかやってるうちに、社員さんの悩みを話されるようになったんですね。当時はまったく相談のスキルがなくて、何か話される、相談されればされるほど、こっちはよかれと思ってアドバイスしていても、関係がどんどん悪くなっていく経験をしたんですよね。相手のことを傷つけてしまい、こちらもストレスが溜まってしまうのでダメだと思い産業カウンセラーという資格をとることにしました。
そこから相談スキルを学び磨いていくうちに、本業にしたいなと思うようになって。でも、会社員だと人事異動があるから相談をメインでできる仕事はないかなって思ったんです。当時30歳の目の前で独身で結婚のあてもなく、私がこのまま一生食べていける仕事、何かないかなと思って。公務員だったら女性でも定年まで働けるなって、試験を受けて、とりあえず一生食べていける職と、相談業を一緒に手に入れようと思ったんです。
ーーなるほど。そうして公務員を目指すようになったのですね。保護観察官になられたのはなぜですか?
国家二種試験を受け、いくつか省庁回るなかで、相談ができるという点で、ハローワークの求職窓口か、あとは法務省の犯罪加害者の再犯防止指導、この辺だなと思ったんですね。どっちも本気で受けに行ったら、ハローワークは落とされまして、法務省は拾ってくれたっていう、それだけです。笑
ーー犯罪加害者の再犯防止というと、犯罪加害者や被害者と話すことで、心理的な負担が大きいイメージがあるのですが…
確かに、殺人・強姦・窃盗・覚醒剤・暴力団・放火・横領・詐欺などの犯罪加害者と会いました。
家庭訪問とかもするんですよね。多分犯罪者って怖いっていうイメージを持たれてるんじゃないかと思うんですけど、実は必ずしもそうではないことも多いんですよ。犯罪加害者って怖い人というよりも、そうですね、犯罪加害者は恵まれてない人の行く末みたいな感じなので、今まで自分の話を真剣に聞いてくれた人なんてあまりいないわけですよ。だから、「どうもこんにちはー元気にしてた?」とかで自分の家に遊びに来てくれる人もいないし、自分の話をちゃんと聞いてくれる人もいないし、まして誕生日を祝ってもらったこともない人とかザラにいるんです。ということは、話をするだけで結構喜ばれるんですよね。だから怖くはない。怖くないような制度は作ってますよ。例えば家庭訪問に行くときには1人では行かないとか、リスクが高い犯罪加害者に対してはそれ相応の手厚く何人かで一緒にチームを組んでやるとか、上司とか含むベテランとか含めて関わっていくとか、リスクに応じた関わり方はする、という制度的な体制作りはできている中で、その相手との信頼関係を作っていこうみたいなところは、意外と歓迎されるんですよね。
ーーそうやって犯罪加害者とかと関わりながら、その人が社会でうまく生きていけるようにアプローチしていっていたんですね…安定して定年まで働ける公務員をやめて、現在個人事業としてお仕事されている理由はなんですか?
当時の仕事はものすごいやりがいもありましたし、経済的にも安定しており有難かったんですが、ありがたいことに結婚ができて、子どもを授かりました。国家公務員だと全国転勤なんですよね。子どもが生まれてからは出産とか育児とかで、転勤を猶予してもらっていたのですが、そこから復帰して転勤になる時期が来てたので、何かないかなと思ってずっと探していたんですよ。その準備のため、公務員時代に副業を10年していたんですね。どうやったら自分で個人で稼いでいけるのか模索する10年でした。
ーー具体的に副業では何をされていたんですか。
Kindleで本を出したり、仕事を休みとって月1回他の組織のメンタルヘルスの相談を受けたりとか、ホテルの予約代行みたいなことだとか。釧路のキャリアコンサルタント仲間と釧路公立大学に出店に出させていただいて、無償でキャリアコンサルティングについてのお話や、大学生とか学園祭に来ている方々に「アナタの適職はなんでしょう」とプチ診断みたいなものをやったり。何かをちょびっとご相談、みたいなのをしたりとか、小中学校に出前授業で入らせていただいたりとか、起業家イベントで登壇させていただいたりとかしていました。
当時は副業って言葉がなかったんですよ。『週末起業』という藤井考一さんの本がすごい売れた時で、サラリーマンをしながら、休みの日に何か自分のライフワーク入れようみたいなのがあって、副業という言葉自体はなかったのですが週末起業という言葉は流行ってはいましたね。
ーーまだ副業があまり認知されていない中、安彦さんは副業に目を付けたんですね。
このままだときっと限界が来るだろうなーとか。その役所の中にいたら外の世界わかんないよなとか思ったんですよね。
あと、公務員辞めたのは、小1の壁もありました。保育園では朝から晩までフルで子どもを預けられて、かつ保育士さんたちがマンツーマンで面倒を見てくれるのですが、小学校に上がったら学校は14時とか15時とかに帰宅。そこから学童に預けたとしても、担任の先生みたいにつきっきりではない。5年生とか6年生になればお父さんお母さんなんていない方がいいって、留守番の方が楽しくなるけど。でも1年生2年生の放課後の過ごし方をどうしようというのが小1の壁っていうんですね。それが来ることも分かっていたので、上の子が小学校に入る1年前というタイミングで公務員を辞めたんですよ。起業1年目は私がドタバタすると思ったので、そこの期間をまだ保育園行ってる間にして、2年目からは子供が小学校に適応するのをバックアップできるようにしよう、というタイミングだったんですね。
子どもが、家に帰ってくるのも迎えられるし、宿題も見れるし、おやつを食べながらっていう、母の働き方をしたかったんですよね。
今は、DRIVEを14時過ぎには出て、小学校2年生が帰ってくるので、14時50分には家に帰ってそこから母ちゃん業をやってます。風呂入れて宿題を見てとかそういうの。笑
今日はこの後、習い事の体操教室に送りに行ってきます。
ーー安彦さんの母の一面も知ることができなんだか不思議な気持ちです!これまでされてきた仕事のなかで共通して大事にしてる想いですとか、社会に対してこうしたいって思いなどありますか?
愛のあるメッセージを伝える。が共通している想いです。
ーーDRIVE入居背景についてお話していただいてよろしいですか。
起業してから2年間ほど自宅でずっと仕事をしてたんですけど、さすがにもう飽きてきて。オンラインのお仕事ばかりなんで、たぶん何かリアル成分に飢えていたのかもしれないですね。運動不足や創造性不足も感じていました。今年の5月、独立3年目になる時に、何か変えようと思って、コワーキングスペースをあちこちドロップインで気分転換に使わせていただきながら見ていく中でDRIVEいいなと思って続けてさせていただいています。インテリアとかオシャレな空間で、ご飯を食べれるところがあって、ロッカーも使えて。あと、家から適度な距離で、ウオーキングにもなり運動にもなるのも良いですね。
ーーDRIVE入居してみて実際のところどうですか?
快適です!
zoomつないでいると相手から「あびさん、おしゃれなとこに居ますね」と言われます。
敷居が高くなく、居心地がいいですね。
他のDRIVE利用者さんが、英語や中国語で話しているのが、自然と耳に入ってきます。普通日常で英語が飛び交っているとか、ええ!?みたいな感じじゃないですか。こんなペラペラなんだこの方、みたいな。そういうのを聞いていると面白いんですよね、あと、お客様と話してるんだなっていう人とか、学生さんとしゃべってるんだなみたいなのが、別に聞くこともなく漏れ伝わってくるじゃないですか。そういうのも面白いですよね。楽しいんです。ワクワクします。笑
本のキュレーションも、自分が読まない本、そそられる本など、休憩時間に楽しんでます。あれはどなたが選んでいらっしゃるんですか?
ーーあれは図書館の司書集団の方達が選んでくれていています。2021年度は2,3カ月に1回変わっているんですよね。DRIVE 運営チームからコンセプトの提案をして司書さんたちが選書をしていただく。という風に決めて出させていただいているっていう感じです。
DRIVEに行けば、本が読め、新聞が読め、いろんなモチベーションが上がったりとか、いろんな方との出会いがある。めちゃコスパいいですよ。コーヒー飲むなら、スタバ行くより、DRIVE行こう。
ーーうれしいです 笑 それは。ありがとうございます
スタッフさんがみんな優しくてキュートです。
あ、うららさんですよね、私の傘に名前を貼ってくれたのは。私が入ってそんなに経ってない時だったと思うんですけれども、雨が降ってて、白いビニール傘を持ってたんですね。「傘立てに入れようと思ったら、どれか分かんなくなりますよね」って言って、マスキングテープで名前を書いて、傘の取っ手に貼ってくれたんですよ。入って間もないのに、名前も覚えてくださって、私の名前をサラサラと漢字で書いてくださったんですよ。すげえ、神対応だと思って。この人めっちゃ大成すると思って。
DRIVEスタッフの採用方法、非常に気になります。スタッフさんが、それぞれ素敵な方なのでどうやって採用されているんだろうと。
ーーとてもうれしいです、それは、、!ありがとうございます!DRIVEを今後どのように活用していきたいですか?
zoom交流会で、5歳の息子が皆さんにご挨拶し、皆さんにかわいがってもらったので、今後、息子と共に、DRIVE利用することですかね。笑 息子がDRIVEに入るぐらいまでは頑張って働こうと思います。
ーー最後になりましたが、何か伝えておきたいことなどございますか。
今悩んでる公務員の人がいたらぜひご紹介ください。ご本人様でなくても、ご家族とかお友達とかでいらっしゃったら。
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ーーありがとうございました!